紀州釣り修行記~黒鯛(チヌ)の伝統釣法「紀州釣り」の修得を目指す男の足跡
黒鯛(チヌ)を狙う「紀州釣り」は、歴史ある釣法だが、今なお進化を続けている。そのひとつ、永易流ハワセ釣りの魅力にとりつかれた「まけ@ダンゴマン」の、七転八倒周囲爆笑の修行記ブログです。

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明日のジョー(南紀のsomeさんより寄稿)

土曜の午後8時過ぎ、少しでも眠っておこうと横になったが眠れる筈がない。
こういう時に私は必ずあるイメージを頭に描いて眠りを引き寄せようとする。
暗い宇宙にある月の、深い割れ目に落ちてゆく。
見上げると星が煌いている。それを見つめながら奈落の底にゆっくりと沈んで
ゆく。
これは星野宣之さんが書いたSF漫画のワンシーンなのだ。
何故か印象に残っていて、いつも強引に眠ろうとする時には頭に描く。

少しうとうとしたのだろうか、「来たわよ」という声で目が覚めた。
時計を見ると午後10時だった。
階下にゆくと、鳥羽で釣りをした友人5人が顔を揃えていた。
5人とも金曜の夜に鳥羽に向かい、仮眠した後で釣りをしたのだ。

まけさん、かじさんは東京から、てつさん、なおさん、永易さんは大阪から
だ。

MFG(マルキューファングループ)主催の紀州釣り大会が日曜に田辺であり、それに参加するため東京からやってくるまけさん、かじさんに合わせ土曜に鳥羽、日曜田辺という段取りで5人が動いたのだ。

私の家で合流して田辺に向かい、そこで少し仮眠するつもりだが、まけさんの
例をとると
金曜午後8時半横浜発→鳥羽到着土曜深夜→炎天下の釣り→南紀経由→田辺着
日曜深夜1時半となる。
つまり二日間ほとんど眠らずに紀州釣りをする事になっていてプラス長時間に
わたる運転である。

はっきり言ってすごい情熱だと思わざるを得ない。
言い方を変えると、ほとんど団子マゾ軍団である。

やあやあと久しぶりに会う友と語らうが、実は先月マルキュー紀州釣り大会で顔を合わせている。鳥羽での釣果などを聞いてる間もなく時計は午後11時を指す。なおさんが優勝宣言をかましていたが、全員意にかいすことなく、とにかく温泉で疲れを流して出発しようと皆で家を出た。

私は家で入浴を済ませていたが、付き合いで温泉に浸かった。てつさんが私の
珍宝を見たいと言ってたので願いを叶える意味もあった。
彼と会ったのはたしか2,3年前の話になると思うが、その頃は饅頭のような身
体つきだった。それが紀州釣りに本腰を入れてからは引き締まった身体になっ
た。なんでも6キロほど体重を減らしたそうだ。釣りのほうも最初は沈まない
団子を打っていたとは思えないほど成長著しくて、永易さんと対等に釣りの話
をするぐらいで、結構生意気なヤツだ。(笑)
口には出さないが密かに優勝を狙っていたのかもしれない。

温泉を出たのが12時、そこから3台の車が走る。トップは大阪ナンバーてつさ
ん号、2番手は横浜ナンバーまけ号、そして最後は和ナンバーのsome号であ
る。ちなみに私の車が一番汚くてボディーは猫の足跡だらけだ。

「ぶっこんでくんで、よろしく!」っていうぐらいのスピードで走るてつさん
号は、すでに私の視界から消えた。なんとか目の前のまけ号に付いて走ってい
たが、途中で永易さんがハンドルを握った瞬間に「上等じゃねえか、てつ
!」ってぐらいのスピードで走り出して、これもまた私の視界から消えた。
集合場所を知らない私はなんとか付いてゆこうとアクセルを踏んだが、大阪の
スピードスター達に追いつく事はなかった。でも、たぶん私が遅すぎるので
あって、彼らはきちんと制限速度を守って走っていたんだろう。

白浜という場所で「海くん」に寄る。ここは藤原義雄さんの店である。
ここでオキアミ半ボイル1パック購入。隣に乗っていたかじさんが「someさ
ん、ボケはあるの?」と聞いてくれたが、ボケは買わなかった。もっとも置い
てあるのかどうかも聞かなかった。オキアミとコーンがありゃいいや。

田辺に入ってから、てつさんに電話して場所を聞く。「あっ、あれじゃないの
?」かじさんの声にハンドルを切って漁港に入るとたくさんの車が見えた。
「この時間に人が集まってるんだから、あそこだね」

マルキューさんの車から机、テントなどが下ろされていて、関係者の人が準備をしていた。
時計は午前2時、出船は4時なので2時間あまりの余裕。する事も無いしテント
を張るのを手伝った。

受付を済ませ車に戻り横になる。競技説明が3時半ぐらいからで時計は3時前。
少し目を瞑っているとわいわいと騒がしい。見ると船に大勢が乗り込んでい
た。

「えっ?」
うっかり眠ってしまったのか?と錯覚したが、どうやら3時出船の釣り人達の
ようだ。いやいや、釣り師というのは低血圧には無理だよねえ。

競技説明が終わり、番号札を引く。私が引いたのは最後の30番。
偶然まけさんが28番、ひーやんさんが29番で、ヌカスナ掲示板仲間御一行とな
る。
私はすでに眠くて、一番最初に船に乗ってからは磯に着くまで目を瞑ってい
た。まけさんに「someさん、もうすぐです」と起こされると
空はうっすらと明けかけて、船の中は数人が残るのみだった。

渡礁した磯の名前は知らないが、すでに二人の投げ釣り師の方がいた。
船つきにまけさん、次にひーやんさんが釣り座を決める。若い番号から順に釣
り座を決めるルールだ。

細長い島で3人が降りた後、マルキューの人達二人も同じ島の反対方向に降りた。17mぐらいの長さで、幅が5m程の島だ。
風化され滑らかな砂岩質の岩で、湯浅の磯とは違い横になっても大丈夫だ。
フナ虫も多くあったし、カニもイガイもあって、餌が無くても釣りができそう
だ。ガキの頃の釣りと言えば、餌は買うものでなくて捕るものであった。
釣りに行くと言えば、キスならゴカイを掘ったものだし、ガシラ釣りだとヤド
カリ、貝、カニなどを捕ったものだ。うなぎならミミズといった具合である。

この日は沖に台風が発生したとかで、うねりが強く沖には出れなかった。
遠くに目を走らせると海の色が違い、マッチ棒ほどの灯台近くには白波が見え
た。暑くなるだろうなあ~と思った。
マルキューの長袖のシャツを着込んでいるが、これは釣友の由美さんにもらったものだ。
京都に住む由美さん、kabeさんと大会で会う事を楽しみにしていたのだった。
ところが用事ができて二人の参加がなくなってしまい、私は二人分の釣果を叩
きだすと豪語していた。

70mほど目の前にはクエの養殖筏が浮かんでいる。
ちょうど投げ釣り師二人は島の中央付近から筏に向かって竿をそれぞれ3本づ
つ出していた。まけさんとひーやんさんが釣り座を決めると、私は投げ釣り師
の1人と話をする事にした。

気前の良い方で色々な話を聞かせてくれる。水深、クエ養殖筏もその方に聞い
たし、後ろの山に頭を覗かせているのがワールドサファリ(動物園)の観覧車
である事、横にはホテル川九、そのむこうにあるのがホテル古賀の井で、湾の
左側をぐるりと回るとそこには円月島が見えるという。ホテル古賀の井は15年
ぐらい前になると思うが、将棋の名人戦が行なわれた。今は亡き親父と二人で
観戦にきたのを懐かしく思い出した。
寝ぼけた頭にだいたいの地図が広がって、自分の居場所がぼんやりと浮かん
だ。

マルキューの人達は、まけさん等とは反対に位置する場所から、ホテル川九向いて団子を投げ始めていた。それは船頭さんのアドバイスだった。
ちょうど投げ釣り師を挟んで釣りを始めた格好だ。

投げの人は前日の夕方から徹夜で釣ってる。蚊取り線香を焚いていたし、マッ
トも持参していたから用意周到で、聞くと20年から釣りをやってるそうだ。
狙いは真鯛、コロダイ、ヒラメ、キスなどだが、魅力を尋ねると何が喰うかわ
からないのがたまらないと言う。

「で、釣れましたか?」と聞くと、「エイばかりやわ、あとは餌取りや」と
笑った。その言葉どおり、私が見ている間にドラグがすべり合わせて上がって来たのがエイだった。

30分ほど話をしてる間に他の人達は準備万端、団子を投げ始めた。
それでも悠長に構えていると、「紀州釣りやったらそこから向うのホテル向い
てやったらええのと違うかな」と教えてくれる。

その場所には糠が落ちていたので、誰かがやったに違いない。
じゃあ、ちょっとそこでやらしてもらいます、と挨拶してようやく準備に入っ
た。

今回の団子は、糠、砂、サナギ、押し麦のシンプル団子。アミエビも用意しな
かった。餌はオキアミとコーン。釣れるストライクゾーンは狭くなるのかもしれないが、私の釣りは目をつぶってバットを振ってるようなものなので、たいして関係ないと考えている。
どれぐらいの量のアミエビが必要なのかが、なにかの折に見えたなら入れよう
かな?ぐらいである。

まずは飾り気のないシンプル団子スタイルが自分に合ってるような気がして
る。

マルキューの人が合わせを入れた。ぎゅーんと絞り込まれる竿が魚の大きさを知らせてくれる。
タモを出して掬ったのはチヌで、目寸だが37,8センチありそうだ。
「おめでとうございます」と声を掛けると、笑顔で「ありがとうございます」
と返って来た。見るとはなしに二人の釣りを見ていたが、時に笑いあい、純粋
に釣りを楽しんでいる姿に「こういう人達の作るものは、いいものやろな
あ~」と思った。

もう1人の方も、良型のクエ子を掛けて捕った。途中、根に張り付かれいたの
で無理だと見ていたが、見事に上げたので近くに行って見せてもらった。
「これ、優勝できますよ」と言うと「いやあ~、魚種が違いますから」と真面
目に返答されたので困った。
実はグレだと思っていたので、クエであることに驚いたが、養殖筏から逃げた
クエがシモリに付いてると聞いていたので、それが真実であるのを確認できた。

自分の釣りは、ほぼチャリコが入れ食い状態で、為す術を知らないからひたす
ら団子を硬く握る事に専念していた。チャリコ、ベラ、ハゼ、フグが餌取りで、途中コーンが触られずに戻ってきたり、半ボイルが戻って来た瞬間があったのだが、それが何故なのか?わからない。たまたま餌取りが消えた→おっきな魚が寄ったのか?→なにか手を打ってみたい→どんな手があるんやろ?という結論もでない思考を展開するだけで、しばらくするとチャリコが釣れるのだった。

これは飯でも食うて考えよう。と言っても喰ってる時間は「うまい、うまい」
と舌鼓を打ってるだけだ。
暑くなるだろうと予想していたので、クーラーには2リットルと0.3リットルの
ペットボトルを凍らせたものと、弁当、そうめんを入れていた。
ここはやはりそうめんを喰おう。

1人で喰うのもなんなので、まけさんの所にいって喰えと薦める。
迷惑そうな感じだったが、仕方無しにすするまけさん。まけさんも苦闘してい
たのだ。
「目を開けてられないから浮きを見てないですわ」
強烈な睡魔との戦いである。

前夜遅くまで仕事をしていたという、ひーやんさんも徹夜組で、あわただしく
準備して参加したそうだ。ひーやんさんにもソーメンを薦めた。

こちらも状況を聞くと餌取りばかりで芳しくないようだ。ただ、まけさんと
ひーやんさんは午後3時の撤収前まできっちりと団子を握って釣りをしてい
た。

私は炎天下とチャリコに心を削り取られたようで、横になったり、磯周りをう
ろうろしたりと集中力に欠けた釣りになっていた。熱い岩に横たわり、笠を顔
にかぶせて眠ろうとしたが、じりじりと焼ける背中と水上スキーを引っ張る
ボートの音が余計に熱さを掻き立てる。辛抱たまらないと起き上がると、寝て
いた部分が汗で湿っていた。

俺は何をやってるのだろう?
こんな目をして釣りをするのはおかしいのじゃないか?
目の前を3人乗りの水上バイクが走り過ぎる。女の子二人を乗っけていた。
再開し、団子を握り締めた。俺もそっちがいいんだよ、と呟きながら。

右にいるまけさんを眺める。身体を前後に揺らしながら団子を締めているが、
その姿が痛ましく思える程疲労が浮き出ていた。
時折、水分を補給しているのは見かけたが、飯を食うでもなく、憑かれたよう
に団子を握り放る。二の腕は真っ赤に焼けて、日焼けを通り過ぎて軽度の火傷
に見える。

何故にまけさんはこうまでして団子をやるのだろう?
その姿は大学受験生に似てるように思えた。目指すとろこが俺とはまるで違う
のだろうな。
こうして団子を握り投げ続けていれば、どこかで視界が開けるのだろうか。
熱帯のジャングル中をずんずん進みゆけば、澄んだ泉があるオアシスが見つか
るのだろうか。それとも、今この瞬間こそがオアシスになっているのだろう
か。

状況はとても厳しいものだったが、ひーやんさんがボラを掛けた。
「おお、ボラが釣れたって事はチヌも可能性があるかもしれない」と声を掛け
ると、「そうだといいですね」と竿をあやつりながらタモでボラを掬った。

ひーやんさんの釣り歴は私など足元に及ばないが、紀州釣り歴は2年ほどだと
言っていた。
釣り具屋の人に勧められて始めたらはまったそうだ。
杓を使って的確にポイントに団子を入れてる姿と、永易浮き、寝浮きと使い分
けてやっていたから、相当やってるに違いない。

二人とも真剣に海に対峙している姿を見ながら、どこかで圧倒されてる自分が
いた。どうも俺は大会に向いてないな、と思った。

大会の大きな目的は、魚を釣る事、釣技を競う事だろう。
ここだけはみんなが目指して釣りを展開している根の部分であるが、私の釣り
は釣れなくてもいいと考えている部分がある。釣れても嬉しいが、釣れなくても落胆しないと言った方がわかりやすいだろう。

大会に参加する以上は、釣ろうという気持ちで竿を振るのは最低のマナーにな
る。ここで釣れなくてもいいや、という態度は、真面目にやってる人達に不快感を与えそうだ。
特に大会後の抽選会でペアー賞があり、それによって賞品をもらえるから、私
と偶然ペアーになった人にも申し訳ない。
決して不真面目にやってるわけではないが、みんながひとつの道を歩いている
のにどこか脇道にそれて休んでいる感があって、勝手な釣りになってる自分に引け目を感じるのだった。

午後を過ぎ風が出て来た。少し陽射しも柔らかく感じられた矢先、てつさんか
ら電話が入った。「どうですか?」
「いや~、全然駄目ですわ、けどマルキューの人がチヌを釣りましたよ、そっちはどうです」
「1枚釣りましたわ、けど潮が上げてきて釣りができんようになったので、も
う片付けましたわ、なおピーが2枚釣ってるから、今回も持ってかれそうです
わ」

「ええ~、なおさんが、そいつはスゴイ」
わけのわからぬ感動が私を包んでいた。なおさんは去年の家島MFGで優勝し
ているのだ。今回優勝すると2連覇である。
彼はてつさんと同じ時期に団子を始めているが、途中シンガポールへ転勤に
なっていた事もあって釣行回数も少なく仲間内では目立たない存在だった。
仕事も忙しく、競馬も忙しい、それに家庭人である彼は二人目の子供ができた
ばかりで釣行回数自体が少なかった。

その彼が家島で優勝した時に仲間の胸に広がったのは、「ついてるヤツだな
あ」ぐらいだったと思う。

今回、うちに来た時の爆弾宣言も、みなの耳には「冗談にすら聞こえない程
度」の言葉だった筈なのだ。しかし、現実に2連覇の可能性が出てきている話
を聞いて、彼は「能ある鷹」だったのかもしれない、と自分の不明を反省し
た。

とりあえず現状をまけさんとひーやんさんに伝えて、「2枚が優勝圏内らしい
から、頑張りましょう」と声を掛けた。
しかし、残り時間が迫っているのと朝からの状況が続いている中で、その2枚
はアメリカほど遠いものであるのもわかっていた。

時計は2時をまわっていて、残すところ1時間を切っていた。
ただ最後に降りたので、回収も最後になるだろうと考えていて3時になったら
片付けようと決めた。

団子を追加して手に握力が無くなっていたので、少し水分多めの団子にして釣
りを再開する。しかし状況は変わらず、隣を見るとまけさんが片付けを始めて
いる。
「まけさん、こっちに船が来るのは3時半ですよ」と声をかけて寝浮きを見て
いると、すっと立つ。合わせを入れ、巻きに掛かると穂先に糸が絡んでいた。

ガイドが道糸にすべっている。「あっ、折れた」
竿が折れると力が抜ける。絡んでいたっけ?と思いながら穂先を確認すると折
れていない。
「でもなんか音がしましたよ」
音楽に精通してるまけさんの耳に、裂けたような音が入ったらしい。

よくよく調べるとトップガイドが割れて飛んでしまったのがわかった。
終わったな・・・ふと沖に目をやると船が浮かんでいた。
「あれ?こっちから撤収すんの?」
あわてて片付けに入る。ガイドを紛失しないように気を使いながら竿を畳ん
で、ゴミをバッカンに入れる。最後まで締まらない釣りになったなあ~。

撤収作業の渡船に次々と人が乗り込む。永易さんがスカリを磯から上げてるの
が目に入った。見ると3尾入っている。まけさんと顔を見合わせ「ひょっとし
て永易さんが優勝?」

港に着くと釣果があった人の検寸、検量が始まった。テントの脇になおさんが
立っていて
バッカンに入ったチヌを見ると3尾ある。
「えっ、2尾じゃなかったんですか?」
「ちょうど最後に1尾釣れたんです」
「へえ~、でかいのもありますね、優勝ですね、おめでとうございます」
「いやいや、永易さんも3尾ですから、まだまだ・・・」

検量の結果はなおさんの優勝決定、大物賞はなおさんと永易さんが42センチで
同寸だった。よってなおさんは重量で勝ってるから、大物賞は永易さんに決
まった。なおさんの優勝は、重量、大きさともを満足させた横綱優勝だった。

この大会はペアー賞というのがあり、こっちで優勝したのはてつさんで、なん
だか親友2人に釣りの女神が祝福したような結果になった。
この大会に手弁当で裏方を引き受けたてつさん、なおさんコンビに言葉は悪い
けど、優勝がころがりこんだのは、他人の為に尽力した結果の運に包まれたん
じゃないかと思えた。

もっともマルキューの会社の人、テクニカルスタッフの皆さんの力もあるわけだけど。

ちょっと祝賀食事会をやろう、という事になり近くのレストランに行き、「何
故、優勝できたのか?」という話をする。
私はシンガポールに転勤になっても、向うでもくもくと紀州釣りをした情熱が
華ひらいた
のでは?と言った。しかも南洋チヌを1尾釣り上げているのだ。

しかし本人は「いや、それは関係ないですわ、僕は自分が釣りに行けない分、
他人の釣行記を読んでイメージトレーニングしてるんですわ、それが大きいと
思いますわ」

「それってええとこ取りみたいや、暗黙知の話やなあ」
他人の釣行記にある状況、釣り方を頭に描いてパターンを整理しておく。
実際に釣りに行った時、その引出しから似たパターンを引っ張り出して来て実
行する。

これは言うほど簡単に実行できる話じゃないが、それをやった結果が2連覇な
ら天才である。しかし、何故に競馬は当たらないのだ。(笑)
実はこれには私なりの解答があって、競馬は欲が絡むから当たらないのだ。

彼はタイミングの人なのかもしれない。剣道をたしなむと聞いたから、居合の
人と言ってもいい。何か瞬間を掴むのが飛びぬけて上手なのかな、そんな気が
する。
無欲、無想の釣り、なんだか格好がいいぞ、なおさん。

とにもかくにもおめでとうございました。

祭りが終わった後は疲労感に包まれる。どうしますか?まけさん、かじさん。
聞くと火曜日まで休みを取ってるらしい。
鳥羽で釣りして田辺で釣りして、またもや南紀で釣りができるや否や。

国道311号線を走る私の後ろには、横浜ナンバーがぴったりと張り付いてい
た。2人とも疲労という服を着てるようで、半分壊れていた。
田辺市本宮に着いた所で湯の峰温泉に寄る事にする。ここの湯は疲労に効くは
ずだ。

連休とあって人が多かったが、着いた頃は夕闇が迫り来る時間で、温泉宿の提
灯に灯りが燈る。風情があるので喜ぶと思ったとおり、まけさんが「嫁と来
たいです」と言っていたので案内した甲斐があった。

なんか疲れて二人とも車の中では外国人になって喋っていたようで、かじさん
は「カディー」と呼び名が変わっていた。
まけさんも南紀通になってきて、もう案内できる温泉ネタもなくなったな。
2人とも日焼けが湯に痛いらしく、顔をしかめて浸かっていた。

釣りの方は、朝起きた時点で決める、という話になった。
釣りか観光か、どちらかに決める。私は竿を直すので釣りなら参加しないが、
竿が壊れてなくても同行する気はなかった。私も疲労困憊していたのだ。

遅い朝、まけさん、かじさんの結論は「日陰の釣り座ってないですか?」だっ
た。
実はあるんです。チラシの裏に地図を書き込む。ついでに数箇所、可能性のあ
る場所も書き込んだ。「今夜は庭で焼肉でもやりましょう、だから早めに竿を
畳んでください」と言って送り出した。
なんせ釣りをやりだすと浮きが見えなくなるまでやるんだもの。

一通り買い物を済ませ、スロ屋に座る。涼しくて気持ちがいいが、財布も涼し
くなった。
家に帰って炭を熾していると携帯にまけさん。
「今、終わったところです、何時ぐらいに着けばいいですか?」
「今から風呂に入ってると遅くなるし、どうせ炭で煙臭くなりますから家の
シャワーを
使って下さい、で、どうでした?」

心なしかまけさんの声が弾んでいるように感じた。釣りして疲れが飛んだのか
な?と訝ったが、返事は驚くべきものだった。
「47センチ頭に3枚です、かじさんも42.5センチ頭に3枚でした」
なおさんの優勝と同じぐらいに感動した。
「へえ~、そりゃ良かったですね、おめでとうございます」

私が示した釣り場は先客がいて駄目で、もうひとつの場所は素潜りの人が入っ
ていたそうだ。それでかじさんが去年釣りをした太地港に行った。
太地港は去年かじさんに紹介して、かじさん一人で挑んだ場所なのだが釣果が
無かった。
その時かじさんは「あそこは場所が悪い」と言っていたので、もう一度そこで
竿を出すとは考えてなかった。ところが今回、カディーの選択がドンぴしゃ
りだったわけだ。
やっぱり外人になっていたからなのか?

まけさんは団子でのチヌじゃ自己記録更新だそうで、これが50センチ以上あ
れば南紀の掟にしたがって認定証を発行するところだ。
(南紀の掟 チヌは50センチ以上をチヌと呼ぶ。以下はチヌを釣ったと言わ
ない)
よって今まで遊びに来ている人の中で掟サイズはないので、kabeさん同様、誰
もチヌを釣ってない事になっている。一種の精神的ボウズ救済処置である。
(笑)
ただし、個人的に釣ったと認識するのは自由であるのは当然だ。

今夜の酒は旨い筈だ。まずはビールで乾杯の後、延々と勝利の美酒が続く。
喜びは最後にやってくるのが一番大きいと言うが、地元の私としても「よく釣
れたもんだ」と思ってるぐらいだ。
ビールを煽るまけさんの嬉しそうな笑顔が、田辺の磯で黙々と団子を握ってる
姿と重なり、あれがあるからこれになるんだろうなあ、と思う。かじさんは今
にも踊りだしそうだった。

さあ、喰おう、飲もう、星空の下、豊潤な時が流れてゆく。
まけさんが椅子に腰掛けて眠ってしまった。
まるで「明日のジョー」のラストシーンのようだった。

明日のジョー



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  1. 2005/07/16(土) 20:02:00|
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